徹底解明!! 『小僧の母親は、本当に峰不二子なのか?』
結論から言わせてもらうと『ルパン小僧の母親は峰不二子ではない』 こんなことをいうと、「ウソつけ!!テレビでモンキー先生も言ってたし、本にもそう書いてあるじゃないか?」って言われそうだが、紛れもない事実である。少なくとも、『ルパン小僧』連載当時には、『ルパン小僧の母親は、不明』であった。しかしながら、どこかの時点で、『峰不二子』が母親だという後付け設定が付けられてそれが『公式設定』となってしまったのである。 このコーナーでは、実際の『少年アクション』等を資料として、『小僧の母親は本編連載時には、『不明』という設定であり、峰不二子という設定は後付け』という根拠について解説しながらそして何故、『小僧の母親が不二子』という設定になってしまったのか考察していきたい。
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①峰不二子が小僧の母親であるというのが後付設定である証拠
②何故 峰不二子が小僧の母親ということになってしまったのか?
(1)峰不二子と小僧の母親が似ているという事実。
(2)新ルパン三世第28話『死闘!!峰不二子対ルパン小僧』での誤解の増幅
③ルパン小僧は、『ルパン三世』のパラレルワールドを舞台とした物語なのか?
ルパン小僧がパラレルワールドではない証拠(1)各作品の時系列
ルパン小僧の舞台がパラレルワールドではない証拠(2)新ルパン三世第28話『死闘!!峰不二子対ルパン小僧』に於ける原作者による否定と肯定
④まとめ
①峰不二子が小僧の母親であるというのが後付設定である証拠

上画像は、『少年アクション1976年1号』より第2号の次回予告である 左画像は、『少年アクション1976年1号』より第2号の次回予告である。 連載開始前号(少年アクション1976年1号の次号予告では、『新連載No2』としてルパン小僧というタイトルと小僧とマリリンのイラストが載っているが、作者がモンキー・パンチということ以外は、なにも書かれていない。つまりは、ルパン小僧がどんな漫画であるか、ましてやルパン三世の子供が主人公であること等この次号予告では全く分からかったのである。しかもちょうど見開きページの真ん中に位置しているため非常に見にくくなっている。 ルパン小僧と同時に連載スタートした『鬼太郎の世界お化け旅行』ほうが大きく取り扱われている

上の画像は『少年アクション1976年2号』よりルパン小僧第一回の3ページ目の画像である 注目していただきたいのは欄外の一文。 『あのルパン三世に隠し子が!?父を捜して三千里ようやく見つけたものの』とある。お分かりいただけるだろうか?『小僧はルパン三世の隠し子』とはっきり書かれているが、母親に関しては、まったく触れられていないのである。』 もし仮に、峰不二子が母親だとしたら『ルパン三世と峰不二子の間に子供がいた!!となるのが普通であると思う。 しかもこの1話では、小僧の母親は明らかにされない上にこの小僧の母親は、これ以降、本編には全く登場しないのである

上画像は、『少年アクション1976年8号』に掲載の『アクションパックス』より『ぷろふぇっしょなる参上』のコーナーを抜粋。
このアクションパックスは少年アクションにおけるいわゆる読者参加型(投稿)のページであり、この8号から当時の少年アクション執筆陣の仕事場を紹介、そしてインタビュー形式で質問をおこなう『ぷろふぇっしょなる参上』のコーナーが開始された。その第一弾がモンキー先生だったのだ。その中で、モンキー先生に対して『小僧の母親はいったい誰なのか?他『ルパン小僧』に関する質問をしているのである。左の下段の画像にそれが書かれているのだがかなり見にくいため以下にその部分の拡大画像と質問とその答えを再掲する
これはもう決定的証拠である。
 この記事から見てわかるとおり少年アクション1976年8号、ルパン小僧7話掲載時点では、『小僧の母親は秘密』だったのである。モンキー先生は、今後正体を明かしますみたいなことを言っているが、結局最終話まで『小僧の母親』の正体について明かされることは無かったのである。つまりは連載当時のおいては、小僧の母親は『不明』というのが正解であり、『峰不二子』が母親であるとの設定は『公式』ではなかったのである。このような証拠から、『小僧の母親が峰不二子であるという設定』は完全に『後付け設定』だったということが裏付けられるのである。

しかしながら、インタビューでもモンキー先生は 、ルパン小僧の母親は不二子かと聞かれて答えを濁していること等から、『小僧の母親は、不二子と設定していたんだけど、少年アクションが急に休刊しちゃったから、母親の正体を明かす機会をなくしてしまったんじゃ』とも考えられる。
 ということは、連載終了後3か月ほど経って刊行されたルパン小僧(パワァコミックス版)で『小僧の母親が峰不二子であると言及されているのでは?』と思ったのだが、その紹介のされ方は『意外』なものでした(笑)
それが上のの画像(パワァコミックスルパン小僧①(双葉社刊)カバー折り込み部分より)
以上が小僧の母親が『峰不二子』という設定が後付けであるという証拠です。 『ルパン小僧』は、上記『パワァコミックス』で刊行された後、1984年に大都社『STARCOMICS』より全2巻として刊行されるまで単行本としての発行はありませんでした。
この『STARCOMICS』版にも登場人物紹介はなく、峰不二子が母親であると記載されていない。 では、『峰不二子がルパン小僧の母親』としっかりと記載されている書籍は何かと言えば、それは『ルパン小僧(中公文庫コミック版)1998年刊行のカバー裏表紙、及び帯』である。
↓裏表紙の画像

これには、驚く方も多いのではなかろうか? そう。実をいうとこの『文庫版』こそがルパン小僧の母親は、峰不二子だと初めて紹介した書籍なのである。 この文庫版は、今でも絶版とはなっておらず(2015年現在)、古本屋でも比較的簡単にしかも安価に手に入れることができるため、この文庫版で『ルパン小僧』を初めて読んだ。知ったといいう方も多いはずで他あろう筆者もその内の1人である。 こうして、文庫本で『ルパン三世と峰不二子の子供』として紹介されたため、読者の誰かがそのことをテレビ番組『トリビアの泉』にトリビアネタ投稿し、採用されて番組スタッフがモンキー先生にインタビューをしそのあやふやな事実をモンキー先生が認めちゃったという訳なんですよ。 もはや、テレビ番組で原作者が公に認めて(インタビューに答えて)しまったら、だれが何と言おうがそれは公式設定になるのは仕方がないことですよね。
②何故 峰不二子が小僧の母親ということになってしまったのか?
 ①で解説してきたように、連載当時~連載終了まで、小僧の母親が峰不二子であるとは、明言されていません。
では、何故小僧の母親が峰不二子ということになってしまったのでしょうか。その原因について考察していきます。
(1)峰不二子と小僧の母親が似ているという事実。
まずは、下の画像をご覧いただきたい。
もう、ご覧になってわかると思うがこの二人の女性そっくりですよね。 セリフでお分かり頂けると思いますが、左側が『小僧の母親』 長年、モンキー先生のファンとして作品を見続けている私だって似てると感じるんですから、他の方が小僧の母親を見て『あっ小僧の母親って峰不二子じゃん!』と思ったとしても無理は無い訳です。 ただ、モンキー先生の描く女性のタッチは、髪形は別としても、顔形はルパン小僧連載当時から新ルパン三世連載初期までのものについて非常によく似ているんですね。 つまりは、ルパン小僧の母親が『峰不二子』であると多くの方が思ってしまった原因の一つには当時モンキー先生の描く女性が峰不二子にどこか似ている(書き分けていない)ということがあったんだと思います。
(2)新ルパン三世第28話『死闘!!峰不二子対ルパン小僧』での誤解の増幅
さてさて、この『死闘!!峰不二子対ルパン小僧』というエピソードの「何」が問題なのか?といえば、
小僧本人が『父ちゃんの名はルパン三世!!』、『母ちゃんの名は峰不二子』
と以下の画像のように高らかに宣言しちゃってる訳ですよ。
ルパン小僧ご本人がこう言ってしまったことで『峰不二子=小僧の母親』という根拠の決定打になるのは当たり前の流れだと思います
そもそも、『死闘!!峰不二子対ルパン小僧』とは一体どういう内容なんだというと
《誕生日の贈り物としてルパン三世より宝の地図をもらった峰不二子は、雪山で吹雪の中立ち往生していた。そんな中不二子は、テントの中から外に雪だるまを作っている少年を見つける。雪山の中に子供一人とは、少々怪しいと思った不二子は、少年に話しかける。 少年の名は「ルパン小僧」と言い、彼の父親は『ルパン三世』、そして母親はなんと『峰不二子(自分)』だというのだ。 さすがに呆れた不二子はテントの中に引き返す。 数時間後、吹雪が強まり小僧のことが心配なった不二子が外の様子を確認するとそこには、 無数の雪だるまがテントを囲むようににして立っていた。 不安を感じた不二子は、そこから移動すべくテントから足を踏み出した次の瞬間。 雪だるまから多数の罠が飛び出し不二子を襲う。命からがらテントに飛び込んだ不二子の眼に飛び込んだのは『ルパン小僧』の姿だった。 不二子が小僧の目的を尋ねると彼は、『おまえは偽の不二子だ。それを認めて地図を渡すのであれば、ここから無事に出してやる』と言い放つのであった。 こうして不二子と小僧の奇妙な戦いが幕をあける。≫
という感じ。
要するに、ルパン三世が≪峰不二子≫に送った宝の地図を巡ってルパン小僧と峰不二子が争うという内容。
お分かり頂けると思いますが、このエピソード実に矛盾に満ちていて一見訳のわからない内容なんですよね。 だって このエピソードの不二子がホンモノであれば、小僧の母親は、峰不二子ではないしニセモノだとすると小僧の母親は、峰不二子であるとなる訳です。実際のところどうなのかは、モンキー先生にしかわからないんですが。
以上が、ルパン小僧の母親が『峰不二子である』と皆に思われてしまった原因と思われるものです。
 さて、ここまでは、『ルパン小僧』の『母親』が『峰不二子』であるということが『後付設定』であり、そうなってしまった『原因』と思われるものについて考察してきました。
次に考察するのは、ルパン三世やルパン8世との繋がりについてです。
③ルパン小僧は、『ルパン三世』のパラレルワールドを舞台とした物語なのか?
さて、ここまでは、『ルパン小僧』の『母親』が『峰不二子』であるということが『後付設定』であり、そうなってしまった『原因』と思われるものについて考察してきました。
次に考察するのは、ルパン三世やルパン8世との繋がりについてです。
ルパン三世やルパン8世の設定は、『ルパン小僧の母親が峰不二子』であるとすると『矛盾』や『破綻』が生じてしまいます。
 まず、原作/アニメルパン三世の世界観においては、『ルパン三世と峰不二子との間に子供がいる』ことが矛盾しています。アニメに関しては『ルパン三世に子供がいること』が矛盾しているように感じますが、以下の様に『ルパン8世』という作品もあり、またアニメエピソードの中には、『タイムマシーンに気をつけろ!』の様に将来ルパン三世に子供ができると描写されているものも存在している訳ですから『ルパン三世の子供の存在』は矛盾しません。
次にルパン8世の世界観においては、このように
ルパンファミリー全員に子孫が存在しているため、ルパン三世、峰不二子に子供がいるということは問題はないですが、
 『ルパン小僧の母親が峰不二子』であると、『小僧の兄弟もしくは小僧の父親違いの兄弟が峰不二子の子孫の祖先』ということになり、ルパン8世と峰不二子の子孫は、元をたどれば、『峰不二子』に繋がることになります。8世のガールフレンドであるところの峰不二子は、8世と祖先が一緒ということになる訳で設定の整合性が保てないことになります。(まぁ人類、動物。全て元をたどればつながりますけどね)
 この様なことから、ルパン小僧の母親≠峰不二子であると単純に考えられますが、現在ではほぼ公式にルパン小僧の母親=峰不二子となっているわけですから、この点を解消するために『ルパン小僧の舞台はパラレルワールド』ということにするしかない訳です。
しかし、
このパラレルワールドという考え方は、本当に正しいのか?
いやいや。
ルパン小僧がルパン三世及びルパン8世のパラレルワールドという考えは、間違っています。
次にその証拠を示します。
ルパン小僧がパラレルワールドではない証拠(1)各作品の時系列
 ルパン三世とルパン小僧の時系列を整理すると、以下の通りとなります。
1967年 8月ルパン三世(連載開始)
1969年 5月ルパン三世連載一旦終了
1971年 8月ルパン三世新冒険篇として連載再開
10月TVアニメルパン三世(第一作)放映開始。
1972年 3月TVアニメルパン三世(第一作)放映終了。
4月ルパン三世新冒険篇連載終了
1975年 12月ルパン小僧連載開始
1976年 9月ルパン小僧連載終了
1977年 8月新ルパン三世連載開始
10月TVアニメルパン三世(第二作)放映開始
 お分かりいただけますか?
ルパン小僧が開始されたのは、ルパン三世の原作及びTVアニメ第1作終了後、3年経ってからなんですよ。
 つまりは、ルパン小僧の連載時は、『ルパン小僧ルパン三世のパラレルワールド』ではなく『ルパン小僧がルパン三世の続編』だと思ったとしても全然不思議ではなく、例え小僧の母親が峰不二子であろうがなかろうが、この時点では、ルパン三世との『矛盾』も発生しないのです。
 では、その『矛盾』が生まれたのはいつか?といえば、上の図を見ればわかる通り、ルパン小僧終了後、約1年経ってから『新ルパン三世』が連載開始された時です。
『新ルパン三世』で『ルパン三世と峰不二子との間に子供がいる』という設定もないわけですから、『ルパン小僧はルパン三世のパラレルワールド』が舞台と考えるしかなくなる訳です。
ルパン小僧の舞台がパラレルワールドではない証拠(2)
新ルパン三世第28話『死闘!!峰不二子対ルパン小僧』に於ける原作者による否定と肯定
先に紹介した新ルパン三世第28話『死闘!!峰不二子対ルパン小僧』であるが、実はこのエピソードには、小僧の発言のほかにも注目すべき点がある。
まずは、本エピソードにおける峰不二子と小僧のやり取りをご覧いただきたい。
この場面では、峰不二子(真偽不明)がルパン三世と峰不二子の間に子供がいることを『否定』し、
逆に小僧は、ルパン三世と峰不二子の間に子供がいることを『肯定』している訳です。
ここで、峰不二子を原作者の代弁者として小僧をルパン小僧を知っている読書の代弁者として二人の台詞を読んでみると面白いです。
不二子『第一アタシがルパンとそんな関係をむすんだ事実はまるでありませんからねッ』→
原作者『ルパン三世と不二子の間に子供がいたなんて事実はないよ。』
小僧『本当の峰不二子ならルパン三世とちぎってるはずだ!!』→
読者『ルパン三世と峰不二子の間に生まれた子供が主人公の『ルパン小僧』って作品があったじゃないか!』
という様に読めます。
 この場面で原作者は、ルパン三世と峰不二子の間に子供がいることを明確に否定していますが、ルパン三世に子供がいることは否定しておらずうやむやになっています。
これは、今まで解説してきたように、ルパン小僧本編の中で、ルパン小僧の父親が『ルパン三世』と公式に認めている訳ですから否定できず、逆に峰不二子が母親だということは本編はおろか、単行本でもそんな事実は明言されていないわけですから、明確に否定したわけです。
これ以降の『新ルパン三世』では、『ルパン小僧』は登場せず、ルパン三世自身も自分には子供がいない旨の発言はない訳ですから、『ルパン小僧』の舞台が原作『ルパン三世』後の世界が舞台であり、『ルパン小僧』がルパン三世と峰不二子の子供ではないとすれば、『ルパン小僧』の設定は『新ルパン三世』の設定と矛盾しない訳です。
 ただ、アニメ版ルパン三世に関しては、ルパン三世自身『子供はいない』という設定なのでアニメの世界観とは矛盾しますが、ルパン8世の繋がりには矛盾しないので、『ルパン小僧』は、アニメ版ルパン三世以後の物語と考えれば良い訳ですが、その場合も『ルパン小僧の母親が峰不二子だとすると先に説明した通り、『ルパン8世の『設定』との整合性が保てない訳です
 上記の様にこのエピソードで原作者は、ルパン小僧が峰不二子とルパン三世の子供であることを否定し、新ルパン三世との矛盾を解くつもりだったかもしれませんが、結果として
『父ちゃんの名はルパン三世』
『母ちゃんの名は峰不二子』
という小僧の台詞のみ独り歩きし、皆の記憶に残ることになり、ルパン小僧が峰不二子とルパン三世の子供であることを公式に決定づけることになってしまったのです。
④まとめ
いかがでしたでしょうか?
以上の解説でルパン小僧連載当初は、ルパン小僧の母親が峰不二子という設定じゃなかったこと。それが如何にしてルパン小僧の母親が峰不二子という設定になってしまったかお分かりいただけたと思います。
 確かに、『ルパン小僧』は『連載誌の部数を伸ばすための道具』として生まれた作品ですし、アニメルパン三世が日本を代表するアニメ作品となった今に至っては、『ルパン三世のパラレルワールドが舞台のスピンオフ作品』としてしか認知されていません。
しかしながら、解説を読めば理解していただけるとおもいますが『ルパン小僧』は、ルパンマガジンに連載されている『モンキー・パンチ以外によるルパン三世のリメイク、スピンオフ作品』ではなく、『モンキー・パンチによる正統なルパン三世スピンオフ作品』なのです。
 最後にこの解説によって『ルパン小僧がルパン三世と峰不二子の子供という誤解』が解け、ルパン小僧がもっと正当に評価されることを望んでやみません。
参考資料
週刊少年アクション1976年第1号、2号、8号(双葉社刊)
ルパン小僧(中公文庫コミック版)中央公論新社刊
ルパン小僧1巻(パワァコミックス版)双葉社刊
新ルパン三世3巻(中公文庫コミック版)中央公論新社刊
以上モンキー・パンチ著
ルパン8世(原作:モンキー・パンチ/漫画:おりはるこん(100てんランドコミックス)双葉社刊
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